ごあいさつ

当院は以前から脳神経外科を中心に多くの脳卒中患者様の治療を行ってまいりましたが、平成21年3月31日に地域脳卒中センターに認定されました。脳卒中は発症から治療開始までの時間との戦いであり、また専門医による治療が必要であるため、患者様が迅速に的確な病院に搬送され、または受診していただくために県が認定したものです。当院は3名の脳神経外科専門医を中心に多職種からなるチーム医療で迅速かつ適切な脳卒中治療を行っております。また他の回復期リハビリ病院との緊密な連携にて回復期リハビリへのスムーズな移行を図っています。

脳卒中とは?

脳卒中とは簡単に言えば"突然に起こる脳の血管の病気"です。脳のある部分に血液が行かなくなり発症する脳梗塞、脳の血管が破れて起こる脳内出血、脳の表面に出血するクモ膜下出血の3つが主な疾患です。以前は日本人の死亡原因の第1位でしたが、現在はがん、心臓疾患に次いで第3位となっています。しかしこれは脳卒中の患者様が減ったというわけではありません。食生活の変化と急速に進む高齢化によって脳卒中の中でも脳梗塞は著明に増加しております。死亡に至らなくても言葉がでない、手足が動かない等の後遺症を抱えた患者様の介護は大きな問題です。

3つの主な脳卒中疾患について簡単に説明します。
1.脳梗塞

脳の血管がつまって発症する脳梗塞はその原因によって大まかに3つのタイプに分けられます。高血圧などの原因で脳内の細い血管に動脈硬化が起こりつまってしまうラクナ梗塞、高脂血症や糖尿病が主な原因で脳の大きな血管や頚動脈が狭くなって発症するアテローム血栓性脳梗塞、心臓の不整脈(心房細動)によっておこる心原性脳塞栓の3つです。脳梗塞が起こると言葉が出ない、手足が動かないといった症状が突然に出現します。発症時に頭痛を伴うことは非常に稀です。

2005年10月に脳梗塞治療に対して新しい薬(rt-PA)が認可されました。これは発症から3時間以内に投与を開始することが必須であり、発症から病院受診までの時間がますます重要になりました。

突然しゃべれなくなったり手足が動かなくなったりしたけれど5分か10分で治った、とういうことがあるかもしれません。これは一過性脳虚血発作(24時間以内に症状が完全に消失するもの)の可能性があり、そうであれば脳梗塞の前触れです。症状がとれて良かったと安心、放置せずに病院を受診してください。

2.脳内出血

主に高血圧が原因ですが、脳内の細い血管が破れて出血し突然に手足が動かなくなったり言葉が出なくなったりします。出血の部位や大きさによっては意識障害を来たし致命的になることもあります。脳内出血が起こったら全例手術を行い血腫(=血の塊)を取るということはありません。小さい出血は血圧をコントロールして再出血を防ぎ血腫が吸収されるのを待ちます。意識障害を伴う大きな出血は緊急に頭を開いて血腫を除去することが必要です。中くらいの大きさの血腫は1週間くらい待って血の塊が溶けてきたら吸引除去することもあります。血腫が吸収されたり手術で除去されても麻痺などの症状は残ることが普通です。後遺症に対しては早期から積極的にリハビリを行い、できるだけの改善を目指します。

3.クモ膜下出血

突然の激しい頭痛、嘔吐、意識障害で発症するクモ膜下出血は、その原因のほとんどが脳動脈瘤破裂です。クモ膜下出血の患者様が脳神経外科病院に搬入されたら直ちに出血原因、すなわち脳動脈瘤の有無、部位、形状を精査して再破裂予防の治療を行います。これには開頭して行う脳動脈瘤頚部クリッピング術と血管内治療で行うコイル塞栓術があります。動脈瘤の部位、形状によって若干の向き不向きはありますがどちらも良い方法です。手術が無事に終わって再破裂の危険性が去ってもその次には乗り越えなくてはならない脳血管攣縮という大きな問題があります。また軽いクモ膜下出血、つまり出血量が少ない時には見逃されるケースも散見されます。軽症クモ膜下出血であっても放置すれば高率に脳動脈瘤再破裂を来たし致命的になります。クモ膜下出血こそ可及的速やかに脳神経外科病院受診(救急搬入)が必要な病気の最たるものです。

十善会病院の脳卒中診療体制について

当院の脳卒中診療体制、その特徴を以下に列挙します。

1.
脳神経外科専門医による365日24時間オンコール体制
2.
看護師、理学(作業、言語)療法士、薬剤師、放射線技師、検査技師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどによるチーム医療の実践。
3.
徹底した急性期リハビリと嚥下専門歯科医師の指導のもとでの嚥下機能評価、早期からの嚥下訓練。
4.
近隣病院との連携によるスムーズな回復期リハビリへの移行。

診断機器としてはMRI, 3D-DSA, multi-slice CTを保有し、1年間の脳卒中入院患者様は450~500名です。脳動脈瘤に対するコイル塞栓術は現在当院では行っておりませんが、開頭脳動脈瘤頚部クリッピング術は県内有数の症例数です。リハビリテーションにつきましては平成21年に大幅なスタッフ増員を行い理学療法士10名、作業療法士2名、言語療法士1名となりました。積極的な急性期リハビリを行っております。

おわりに

脳卒中に関してはその予防がとても重要です。高血圧症や糖尿病、高脂血症などは脳卒中の主な原因ですので、それらの予防治療に努めましょう。また過量の飲酒や喫煙も脳卒中の誘因となりますので酒量を控えること、禁煙が必要です。また、言葉が出ないとか手足が動かない、これまで経験したことがない強い頭痛などを感じたら、たとえすぐに症状が改善しても安心せずに脳卒中センターを受診してください。